高野山真言宗第百六十八次臨時宗会での宗会議員による投票で次期金剛峯寺執行長(高野山真言宗宗務総長)候補者に安藤尊仁、岡部観栄、今川泰伸の三師(年令順)が決定した。安藤師は宗会議員を四期務め、内三期は宗会議長、岡部師は元高野山高校校長で前財務部長、今川師は宗議を四期務めており、どの候補者もいずれ劣らぬ宗政のベテランである。 高野宗では、平成十五年三月の第百二十次春季宗会に於いて、宗規を改正し、宗会...
聖徳太子が推古三十年(六二二)に崩御されてから千四百年を迎えた。御廟所である大阪府太子町の叡福寺では四月十日から五月十一日まで、高野山金剛峯寺など所縁の宗派・寺院の出仕により御遠忌大法会が営まれ、日本という国家と日本仏教の黎明を告げた太子のご事績に感謝の念を捧げている。 「十七条憲法」の「和を以て貴しと為す」はあまりにも有名だ。さらに仏法に帰依する重要性を説いた「篤く三宝を敬え」と続く。調和を重...
令和五年には宗祖弘法大師御誕生千二百五十年記念大法会を迎える。御誕生所である善通寺、御入定所である高野山をはじめ、各派でも特色のある記念行事が計画されている。さらに教王護国寺では同年、真言宗立教開宗千二百年記念大法会を厳修する。宗祖が嵯峨天皇から東寺を賜り、真言宗の根本道場と定めたことを改めて銘記する勝縁となるものである。すなわち令和五年は、宗祖と真言宗の誕生日を宗祖の三大聖地と、各山でほぼ同時に...
高野山真言宗では、今次春季宗会に於いて、寺族の規則が改正されて、寺族婦人を初めて定義し「寺族代表」を定め、法人の責任役員に寺族婦人が就任できるようになり、寺族婦人を具体的に保護する文言を追加し、責任役員選定条項に寺族代表を追加した画期的な改正である。 添田総長は提案理由で「住職が死亡した時、前住職夫人の頭越しに新住職が決まり、その結果、前住職夫人が寺院を退去せざるを得なくなる事態に対処するための...
来る三月十一日、東日本大震災から十年を迎える。激しい揺れに続く大津波、そしてこれらが引き起こした東京電力福島第一原発事故と、三つが重なった複合災害は多くの犠牲者と行方不明者を出し、長年に亘る避難生活を強いてきた。避難生活中の震災関連死者も多数を数えている。 十年という歳月は、被災地に、そして日本全体に何をもたらしたのか。あの時ほど私達は、被災者の苦しみや痛み、悲しみの中にある人々に、どうすれば寄...
現代は、世界が一つに繋がったグローバル化の時代である。その特徴は他国の出来事がたちまち自国にも影響することであり、特に今、新型コロナウイルスの世界的感染がそれを証明している。そのグローバル化の幕開けとされるのが、約百年前に世界中で猛威を振るったスペイン風邪の流行である。 スペイン風邪は第一次世界大戦で欧州全土に広まり、日本にも伝染。多くの尊い生命を奪った。帝国主義という弱肉強食の思想が生んだ世界...
核兵器の開発や保有、実験などを全面的に禁じる核兵器禁止条約が去る一月二十二日、批准した五十カ国、地域で発効した。しかし米国やロシアなど全ての核保有国の他、米国の「核の傘」に依存する日本は批准していない。 仏教界の動きとしては、全日本仏教会が「核保有国と唯一の戦争被爆国である日本が、この条約に参加していないことを憂慮する」として、昨年十一月二十日に「核兵器禁止条約の批准を受けて-ヒロシマーナガサキ...
令和三年の新春を迎えた。一月十七日には阪神淡路大震災から二十六年、三月十一日には東日本大震災から十年を迎える。阪神淡路大震災はボランティア元年とも言われ、東日本両震災では「絆」が日本国中を一つに結ぶ言葉になった。日本を毎年のように大災害が襲うようになり、災害列島とも呼ばれる緊張感の中で、いつ誰もが被災者となり得るという視点を通じて災害対策がとられるようになった。宗内に於いても、「共に助け合い、支え...
宗団から末寺まで、それぞれの立場でコロナ禍への対応を迫られた一年が、その渦中で過ぎようとしている。この試練は、我々に何を問うているのか。 感染防止対策の中で、葬儀、法事、寺院での行事等が「密接・密集・密閉」の「三密」を避けるために、縮小・自粛された。各末寺の著しい収入減を受けて宗費削減の方針を打ち出した宗派もある。経済的な打撃は極めて大きい。 経済を回すことによって勢いを増す「感染苦」と、経済...
経営改革を進めている高野山大学の文学部教育学科の設置が文部科学省から、去る十月二十三日認可された。同日から正式に学生募集を開始した。 高野山学園の添田理事長は記者会見で、弘法大師が千二百年前に史上初の庶民教育機関として開設した「綜藝種智院」の理念を踏まえ、「本当の人間力を養い、自分に自信をもって教壇に立てるような教育を目的とした体験重視型のカリキュラムを用意している」と発表した。通常の講義に加え...