高野宗の寺族婦人保護規則新設に想う

投稿日:2021年03月15日

高野山真言宗では、今次春季宗会に於いて、寺族の規則が改正されて、寺族婦人を初めて定義し「寺族代表」を定め、法人の責任役員に寺族婦人が就任できるようになり、寺族婦人を具体的に保護する文言を追加し、責任役員選定条項に寺族代表を追加した画期的な改正である。
添田総長は提案理由で「住職が死亡した時、前住職夫人の頭越しに新住職が決まり、その結果、前住職夫人が寺院を退去せざるを得なくなる事態に対処するための変更」と述べ、改正案では「住職であった者が定めた寺族代表に相当の保護を加えるものとし、正当な理由なくして排除してはならない」としている。その背景には寺族婦人の立場が法人運営上不明確なためである。
これは、「住職亡き後も寺族婦人を大切にする」ことを強く求めたものであるが、寺院護持にとって寺族婦人の役割はもともと大きいものであり、その長年に亘り住職を支え、寺院を支えてきた職務と功績を認め制度化したのが、今回の改正であり、高く評価できるものである。
次に責任役員選定条項に寺族代表を追加した件では、運用には各寺院の規則変更も必要である。宗派では寺族婦人の法的な立場も明確にし、末寺の責任役員の枠を増やし、寺族代表も就任できる規則変更のマニュアルを用意している。寺族婦人の権利保護と共に法人運営の透明化を促すものである。
今回の改正について女性教師でもある寺族婦人に尋ねてみたが、今回の件を評価、特に法人運営に積極的に参画できることは有難く、また檀信徒の理解と信頼の上に、この規則が活用される時、寺族婦人の立場も安定するのではないかと述べていた。新規則の運用への期待は大きい。