公約から見る高野山執行長選の意義

投稿日:2021年05月25日

高野山真言宗第百六十八次臨時宗会での宗会議員による投票で次期金剛峯寺執行長(高野山真言宗宗務総長)候補者に安藤尊仁、岡部観栄、今川泰伸の三師(年令順)が決定した。安藤師は宗会議員を四期務め、内三期は宗会議長、岡部師は元高野山高校校長で前財務部長、今川師は宗議を四期務めており、どの候補者もいずれ劣らぬ宗政のベテランである。
高野宗では、平成十五年三月の第百二十次春季宗会に於いて、宗規を改正し、宗会で候補者を確定した後に全末寺正住職を有権者とする投票で執行長を選出する二段階一宗公選制を導入した。今回、候補者が複数となり、初めての全末選挙に入る。三師は選挙公約(マニフェスト)を発表し、政策を有権者に問うている。
コロナ禍にあって、宗団や本山の財政、疲弊する末寺への支援はどうあるべきか。宗派の公益性と子弟教育を支える教育機関・高野山学園の経営改善策、千二百年の高野山の尊厳護持をどう継承すべきか。御誕生法会や御遠忌法会への取り組み等、三候補のマニフェストに問われる課題は、有権者ばかりでなく、広く本宗、いや宗教界全体に共通する課題だと言える。
有権者諸師には投票を前に、候補者のマニフェストに深く問いかけていただきたい。三候補とも有権者の声を真摯に受け止め、積極的に宗政に反映する姿勢を示している。候補者と有権者がマニフェストを介して繋がる時、一宗選挙は宗務を託すリーダーを自らの一票で選ぶという宗団参画意識をこの上もなく高めるものになる。候補者も有権者も、丁寧に、そして誠実に一宗選挙の権利を行使して欲しい。