社会で男女共同参画が謳われて久しい。仏教界では寺院後継者としての立場や宗団活性化における活躍など諸分野で、女性僧侶や女性寺族が存在感を増している。これは本宗の未来を考える上で、極めて良い傾向と言っていい。 だが、女性を受け入れる環境や女性僧侶を育成する体制は十分だろうか。数年前に開かれた本宗のある宗派のパネル討論でパネリストの女性教師が「女性が僧侶になろうと発心した時に男性と同じように女性を受け...
能登半島地震の状況が徐々に明らかになる中、本宗では高野山真言宗の末寺に甚大な被害が集中していることがわかってきた。能登は以前から過疎化による少子高齢化が進んでいた地域であり、被災地区の復興の中で寺院を再建していくには、尋常ならざる苦難が伴うと指摘されている。檀信徒や地域住民の生活の立て直しも含め、全真言宗を挙げての支援が不可欠であろう。 毎年のように大災害に見舞われる日本にあって、国土安穏の祈り...
年が明けたばかりの元日夕、北陸能登の地を激しい揺れが襲った。住居をはじめ暮らしを支えるインフラが瞬時に壊滅し、多くの尊い命が失われた。水も電気もない苛酷な状況下で懸命の救援活動が行われ、その努力は今も続けられている。本宗でも被災寺院や檀信徒、住民への支援活動が始まった。 本宗では年頭、東寺潅頂院を道場に、最高厳儀である後七日御修法を営んでいる。国土安穏や世界平和など、全ての命の平穏を願う令和六年...
令和六年が幕を開けた。新年号のメインテーマは「平和実現に向けた仏教者の役割」とした。読者各位から貴重な提言を頂いたことに感謝申し上げる。 終息の兆しさえ見せないロシアーウクライナ戦争と激化するパレスチナでの軍事衝突が、憎悪を増しながら対立・分断へと加速度的に向かう世界の最前線の様相を呈している。ミャンマーをはじめ、各地での紛争も止む気配はない。各国の軍拡も進む。そうした極限状況下にあって、我が国...
宗祖御誕生・立教開宗法会から先へ 本年、弘法大師御誕生千二百五十年を迎え、各山、各末寺で慶讃の大法会が営まれ、総本山教王護国寺(東寺)に於いては、真言宗立教開宗千二百年慶讃大法会が営まれた。 御誕生法会では稚児大師尊像が祀られ、産沫が行われ、宗祖の御誕生を祝した。その意味は幼少の大師に産沫することで、生まれてきた全ての子供達が「仏の子である」ことを認識し健やかな成長を願ってのことである。 ま...
イスラム組織ハマスが実効支配するパレチスナーガザ地区にイスラエル軍が侵攻、特に最も人道支援活動の場として尊重されなければならない病院が、ハマスが潜伏しているという理由で激しい攻撃を受けている。 本年は弘法大師御誕生一二五〇年の年であり、本誌は全てのいのちを「貴物」として尊重することを訴えてきた。また仏教徒は「殺してはならぬ。殺さしめてはならぬ」との『ダンマパダ』 (法句経)の教えの如く、不殺生戒...
総本山教王護国寺(東寺)に於いて、十月八日に開白した「宗祖弘法大師真言宗立教開宗千二百年慶讃大法会」は十四日に結願した。また本年は宗祖御誕生千二百五十年にも当り、各山、各末寺でも慶讃の法要が営まれた。 今世界に目を向ければ、ロシアのウクライナ侵攻は続き、イスラエルとガザを実効支配するハマスとの軍事衝突の中で、多くの無事の人々が犠牲となっている。第三次世界対戦勃発の危機すら強く感じる。 宗祖御誕...
大正十二年(一九二三)九月一日に首都を襲った関東大震災では、家屋の倒壊に続いて大火災と火災旋風が起こった。未曾有の複合災害となり、十万五千人以上が亡くなった。百年後の今、その教訓は何を語りかけているのか。 本宗寺院の被災は、東京七ヶ寺、神奈川四十六ヶ寺に上った。この報に接した当時の真言宗各本山会はすぐに救援事業を開始し、慰問団を派遣、全国津々浦々の末寺や教会も、檀信徒を含めて義援金募金の托鉢や犠...
高野山真言宗社会人権局主催の「第三回平和研修会」が去る七月二十四、二十五の両日、大阪府茨木市の総持寺で開催された。 今回の講師は、沖縄守備隊第三十二軍の司令官牛島満中将の孫に当る牛島貞満氏であった。戦後生まれで、小学校の教員だった氏は四十歳まで沖縄に行けなかったが、戦争と平和・祖父に向き合うために通うようになり、証言や戦時資料を集めるようになった。現在は、首里城地下に置かれ、沖縄戦を指令した第三...
宗祖弘法大師御誕生千二百五十年の正当年の中心となる、六月十五日の御誕生会・青葉まつりが各総大本山や各派寺院で盛大に営まれた。各派、各地域の歴史や伝統、信仰に応じた形で営まれた慶讃法要や記念行事は、宗祖の教えの多彩さを表し、全てのいのちを包摂して祝福する曼荼羅世界の具体相を現出したものであろう。我々は真言末徒として、この五十年に一度の勝縁の結願後、捧げられた多様で重層的な祈りを、宗祖がそうされた如く...