石川県能登地方では、地震と水害という自然の猛威がもたらした二重被害の中で、寺院存続に関わる被災も生じているが、今、私達に何かできるのか。 本年一月の地震により甚大な被害を受けた能登地方に、今回更に記録的な豪雨が襲い、進まない復興状況の上に、より壊滅的な被害を与えた。本宗ばかりではなく他宗派も含めて、改めて再興の道を歩み始めようとしていた寺院は地震と豪雨水害という複合災害の中で将来の見通しも立たず...
日本各地の観光地に大勢の観光客が押し寄せるオーバーツーリズムが顕在化している。特に人口の少ない古都の風情を残す小さな町に観光資源が存するが、町の許容能力を超えた数の訪問者によって居住者の生活に著しく不便が生じているのである。そうした問題が最も色濃く現れているのが人口三千人弱の町に年間百五十万人が訪れるという国際宗教都市・高野山である。 「高野山は帝城を去って二百里、郷里を離れて無人声…」と『平家...
本日八月十五日は凄惨な地上戦が繰り広げられた沖縄、人類初の原爆投下が行われた広島・長崎の惨禍を経て迎えた七十九回目の終戦記念日である。全ての戦没者を追悼し、絶対不戦の誓いを新たにする一日である。 約八十年、平和を保ってきた日本だが、世界の情勢はどうか。ウクライナやガザの戦闘は「平和の祭典」であるはずのパリ五輪開催中も続き、平和維持の最大機関である国連安保理は大国の思惑が一致した時のみにしか機能し...
世界宗教者平和会議(WCRP)をはじめ、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教の四団体の共催で去る七月九、十の両日、「平和のためのAI(人工知能)倫理」と題したシンポジウムが広島国際会議場で開催された。 日本が世界十二力国を招き、オンラインを含め約二百名の宗教者やAIに関する研究者、企業家等が参加し、急速に進むAI技術の恩恵と脅威について議論。AIと人類の平和を共存させるための智慧を超宗教で共有した。...
去る五月三十日に醍醐寺座主の壁瀬宥雅大僧生の晋山式、六月十五日に長谷寺化主の川俣海淳大僧正の入山式が営まれた。教王護国寺は次期長者に決まった橋本尚信師の入山式を、七月二十一日に厳修すると発表した。 古代からの観音信仰の聖地・長谷寺で開花した学山豊山の教風、理源大師を祖とする真言密教の本山であり顕教(三論宗)や浄土教、修験道の行学も伝えてきた醍醐寺の法流、鎮護国家の祈りの根本道場と定められ宗祖弘法...
昭和五年一月二十五日から九十四年に亘り業務を続けてきた地に別れを告げ、五月十三日に新天地に移転した。本誌百三十四年の歩みに新時代の息吹を吹き込まんと同人一同、身の引き締まる思いで日々の職務に励んでいる。 本誌の前身誌「傅燈」が明治二十三年に創刊され、四十周年を記念して旧地に移転、爾来九十四年の星霜を経た。満州事変から大陸侵出、敗戦の苦難からの戦後復興と高度経済成長、さらには平成のバブル経済の消滅...
二年以上経過しても解決の糸口さえ見えないロシアの侵略によるウクライナ戦争、半年が経過したイスラエルとハマスの武力紛争はイスラエルの圧倒的な軍事力による無差別殺戮の様相を呈している。国際社会はこの両戦争に打つ手がないかのようである。一方で年頭の能登半島地震に始まり、台湾大地震、インドネシアの火山噴火など、国内外の各地で大災害が頻発している。今、戦争と自然災害が地球規模で全ての生命の存続を脅かしている...
能登半島地震では、全宗派の寺院が被災し、高野宗では能登支所下全寺院の三十八ヶ寺が被災しており、災害対策本部を設置し支援活動を続けている。 去る三月十一日、平成二十三年の東日本大震災から十三年目を迎えたが、その間に問われたのは、一つには被災者の苦しみや痛み、悲しみの中にある人々にどうすれば寄り添えるのか。同悲の念をもって、それぞれの場で祈り行動するという信仰の問題であり、もう一つは被災寺院の復興で...
社会で男女共同参画が謳われて久しい。仏教界では寺院後継者としての立場や宗団活性化における活躍など諸分野で、女性僧侶や女性寺族が存在感を増している。これは本宗の未来を考える上で、極めて良い傾向と言っていい。 だが、女性を受け入れる環境や女性僧侶を育成する体制は十分だろうか。数年前に開かれた本宗のある宗派のパネル討論でパネリストの女性教師が「女性が僧侶になろうと発心した時に男性と同じように女性を受け...
能登半島地震の状況が徐々に明らかになる中、本宗では高野山真言宗の末寺に甚大な被害が集中していることがわかってきた。能登は以前から過疎化による少子高齢化が進んでいた地域であり、被災地区の復興の中で寺院を再建していくには、尋常ならざる苦難が伴うと指摘されている。檀信徒や地域住民の生活の立て直しも含め、全真言宗を挙げての支援が不可欠であろう。 毎年のように大災害に見舞われる日本にあって、国土安穏の祈り...