高野山真言宗では春季宗会に於いて、各寺院・教会の収入額を査定する財務調査に基づいて負担指数を決定し宗費を賦課する現行制度を廃止し、各住職が自ら決めた金額を毎年賦課する「自己申告制」に変える規程改正案を承認した。これにより、宗費は賦課金であると同時に、限りなく志納型に近い性質になったと思われる。 宗費制度改革の最大の趣旨は、これまで原則五年毎に実施され、直近では令和五年になされた財務調査では、地域...
今年は第二次世界大戦終結から八十年。我が国にとっては国土が焼け野原と化した敗戦から復興して八十年の節目を迎える。そして来る四月十三日から十月十三日まで、大阪・夢洲に於いて半世紀ぶりに二〇二五年日本国際博覧会(略称「大阪・関西万博」)が開催される。世界を巻き込んだ八十年前の終戦から今日までの歩みと、世界が「いのち輝く未来社会のデザイン」のテーマのもとに集う大阪万博に共通するメッセージは、平和の尊さで...
今年は第二次世界大戦の終結八十年、阪神淡路大震災から三十年、オウム真理教の地下鉄サリン事件から三十年、日航機墜落事故から四十年を迎える。全てが人類史上に繰返してはならない教訓を刻み、今も警鐘を鳴らしている。 核という人類抹殺兵器が用いられた世界戦争、高度に発達した現代の大都市が初めて直面した大災害、科学技術の粋を集めたジャンボ旅客機の制御不能による未曾有の大事故、若者たちを狂信させたカルト宗教団...
本年一月十七日、平成七年の阪神淡路大震災から三十年を迎えた。発災直後、私も青年教師会の一人として神戸市長田区の被災寺院で行われた炊き出しのボランティア活動に参加した。困難な状況下にある御住職や寺族、また住民の方々と直接接し自分自身が出来ることを精一杯させて頂こうと思った。二月初めの厳しい寒さの中、一杯の温かい食事を手にして、お互いに支え合い感謝し、励まし合う人々の姿を見た。 その経験から三十年を...
旧臓臘七、八の両日、川元祐慶高野山真言宗能登宗務支所長(穴水町・明泉寺住職)の案内で、昨年元日の地震と九月の豪雨という二重災害に見舞われた奥能登の八ヵ寺を巡った。想像を遥かに超える被災の深さに言葉を失った。 崩壊した境内で傾きながらも立つ角塔婆や、全壊判定がなされた堂内に貼られたままの三年前の常楽会の配定も目の当たりにした。懸命に倒壊を拒否しているかのような堂宇も見た。散乱した瓦や木材の一つ一つ...
今年は災害や選挙等情報の双方向で受発信するSNSの力を思い知った一年であった。情報化時代の変遷はここ数年目まぐるしいものがある。かつて私達が情報を得る手段は、新聞、テレビ、ラジオ等であり、一方的な情報を受動的に受け入れるだけであった。しかし急速なIT技術の進歩により、誰でもが容易に情報を発信できる時代へと変化してきた。 検索AIは、インターネット上での膨大な情報に素早くアクセスできる便利なツール...
衆議院選挙が終わり与党は過半数を割る結果となった。「政治と裏金」をめぐる問題など政局が大きく影響する中での選挙となったが、目を国際関係に転ずれば政治と平和の問題が今ほど問われている状況もないのではないか。 各政党・候補者の公約や主張の中で平和政策がアピールされていたが、その平和とはどのような質の平和だったのか。我々は仏教者の視点で仏法に照らして判断しなければならない。なぜなら、戦争への準備は常に...
今年のノーベル平和賞を全国の被爆者でつくる日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が受賞した。 原爆投下から七十九年、「核兵器の廃絶」を訴え続けてきた被爆者の声と活動に光が当たったことを喜ぶと同時に、今ほど核兵器使用の危機に世界が直面している時代はないと思わざるを得ない。そうした危機感を世界に発信し、人類が核軍拡ではなく核廃絶を選ぶ歴史的分岐点に、今回の受賞が位置づけられるよう、平和への取り組みを加...
石川県能登地方では、地震と水害という自然の猛威がもたらした二重被害の中で、寺院存続に関わる被災も生じているが、今、私達に何かできるのか。 本年一月の地震により甚大な被害を受けた能登地方に、今回更に記録的な豪雨が襲い、進まない復興状況の上に、より壊滅的な被害を与えた。本宗ばかりではなく他宗派も含めて、改めて再興の道を歩み始めようとしていた寺院は地震と豪雨水害という複合災害の中で将来の見通しも立たず...
日本各地の観光地に大勢の観光客が押し寄せるオーバーツーリズムが顕在化している。特に人口の少ない古都の風情を残す小さな町に観光資源が存するが、町の許容能力を超えた数の訪問者によって居住者の生活に著しく不便が生じているのである。そうした問題が最も色濃く現れているのが人口三千人弱の町に年間百五十万人が訪れるという国際宗教都市・高野山である。 「高野山は帝城を去って二百里、郷里を離れて無人声…」と『平家...