今年は災害や選挙等情報の双方向で受発信するSNSの力を思い知った一年であった。情報化時代の変遷はここ数年目まぐるしいものがある。かつて私達が情報を得る手段は、新聞、テレビ、ラジオ等であり、一方的な情報を受動的に受け入れるだけであった。しかし急速なIT技術の進歩により、誰でもが容易に情報を発信できる時代へと変化してきた。 検索AIは、インターネット上での膨大な情報に素早くアクセスできる便利なツール...
衆議院選挙が終わり与党は過半数を割る結果となった。「政治と裏金」をめぐる問題など政局が大きく影響する中での選挙となったが、目を国際関係に転ずれば政治と平和の問題が今ほど問われている状況もないのではないか。 各政党・候補者の公約や主張の中で平和政策がアピールされていたが、その平和とはどのような質の平和だったのか。我々は仏教者の視点で仏法に照らして判断しなければならない。なぜなら、戦争への準備は常に...
今年のノーベル平和賞を全国の被爆者でつくる日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が受賞した。 原爆投下から七十九年、「核兵器の廃絶」を訴え続けてきた被爆者の声と活動に光が当たったことを喜ぶと同時に、今ほど核兵器使用の危機に世界が直面している時代はないと思わざるを得ない。そうした危機感を世界に発信し、人類が核軍拡ではなく核廃絶を選ぶ歴史的分岐点に、今回の受賞が位置づけられるよう、平和への取り組みを加...
石川県能登地方では、地震と水害という自然の猛威がもたらした二重被害の中で、寺院存続に関わる被災も生じているが、今、私達に何かできるのか。 本年一月の地震により甚大な被害を受けた能登地方に、今回更に記録的な豪雨が襲い、進まない復興状況の上に、より壊滅的な被害を与えた。本宗ばかりではなく他宗派も含めて、改めて再興の道を歩み始めようとしていた寺院は地震と豪雨水害という複合災害の中で将来の見通しも立たず...
日本各地の観光地に大勢の観光客が押し寄せるオーバーツーリズムが顕在化している。特に人口の少ない古都の風情を残す小さな町に観光資源が存するが、町の許容能力を超えた数の訪問者によって居住者の生活に著しく不便が生じているのである。そうした問題が最も色濃く現れているのが人口三千人弱の町に年間百五十万人が訪れるという国際宗教都市・高野山である。 「高野山は帝城を去って二百里、郷里を離れて無人声…」と『平家...
本日八月十五日は凄惨な地上戦が繰り広げられた沖縄、人類初の原爆投下が行われた広島・長崎の惨禍を経て迎えた七十九回目の終戦記念日である。全ての戦没者を追悼し、絶対不戦の誓いを新たにする一日である。 約八十年、平和を保ってきた日本だが、世界の情勢はどうか。ウクライナやガザの戦闘は「平和の祭典」であるはずのパリ五輪開催中も続き、平和維持の最大機関である国連安保理は大国の思惑が一致した時のみにしか機能し...
世界宗教者平和会議(WCRP)をはじめ、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教の四団体の共催で去る七月九、十の両日、「平和のためのAI(人工知能)倫理」と題したシンポジウムが広島国際会議場で開催された。 日本が世界十二力国を招き、オンラインを含め約二百名の宗教者やAIに関する研究者、企業家等が参加し、急速に進むAI技術の恩恵と脅威について議論。AIと人類の平和を共存させるための智慧を超宗教で共有した。...
去る五月三十日に醍醐寺座主の壁瀬宥雅大僧生の晋山式、六月十五日に長谷寺化主の川俣海淳大僧正の入山式が営まれた。教王護国寺は次期長者に決まった橋本尚信師の入山式を、七月二十一日に厳修すると発表した。 古代からの観音信仰の聖地・長谷寺で開花した学山豊山の教風、理源大師を祖とする真言密教の本山であり顕教(三論宗)や浄土教、修験道の行学も伝えてきた醍醐寺の法流、鎮護国家の祈りの根本道場と定められ宗祖弘法...
昭和五年一月二十五日から九十四年に亘り業務を続けてきた地に別れを告げ、五月十三日に新天地に移転した。本誌百三十四年の歩みに新時代の息吹を吹き込まんと同人一同、身の引き締まる思いで日々の職務に励んでいる。 本誌の前身誌「傅燈」が明治二十三年に創刊され、四十周年を記念して旧地に移転、爾来九十四年の星霜を経た。満州事変から大陸侵出、敗戦の苦難からの戦後復興と高度経済成長、さらには平成のバブル経済の消滅...
二年以上経過しても解決の糸口さえ見えないロシアの侵略によるウクライナ戦争、半年が経過したイスラエルとハマスの武力紛争はイスラエルの圧倒的な軍事力による無差別殺戮の様相を呈している。国際社会はこの両戦争に打つ手がないかのようである。一方で年頭の能登半島地震に始まり、台湾大地震、インドネシアの火山噴火など、国内外の各地で大災害が頻発している。今、戦争と自然災害が地球規模で全ての生命の存続を脅かしている...