二年以上経過しても解決の糸口さえ見えないロシアの侵略によるウクライナ戦争、半年が経過したイスラエルとハマスの武力紛争はイスラエルの圧倒的な軍事力による無差別殺戮の様相を呈している。国際社会はこの両戦争に打つ手がないかのようである。一方で年頭の能登半島地震に始まり、台湾大地震、インドネシアの火山噴火など、国内外の各地で大災害が頻発している。今、戦争と自然災害が地球規模で全ての生命の存続を脅かしている。
最大の環境破壊は戦争であり、国益という我欲をむき出しにした開発による環境破壊が異常気象を引き起こしている。この生命の最大の敵である戦争と自然環境破壊は一国の努力のみでは解決できない。国際的な調和がもたらす平和の中でしか改善できない、人類最大の課題と言っていい。
『阿弥陀経』に「共命鳥」の説話が出てくる。体は一つ、頭は二つというこの鳥は、体を共有しているにもかかわらず、互いを憎み、殺そうとしていた。一方が一方を殺した時、この鳥は死んだ－。この鳥こそ、地球環境を共有して生きている人類そのものではないか。戦争と自然環境破壊を引き起こす土壌は猪疑心と憎しみである。共命鳥が生きていくためには、何よりも信頼関係が必要だったのである。ではその信頼はどうすれば得られるのか。
宗祖が説かれた金胎不二の曼荼羅の教えに、排除の論理はない。そこで豊かに展開されているのは、全てのものは関係し合って世界を構成しているという包摂・共存という希望である。この真理を実践する時、世界は違いを認め合い調和の中で一体となる。これを実現するのは今をおいて他にない。
偏狭な正義のドグマに陥らず、普遍的な正義の世を築く智慧を集めたい。