年が明けたばかりの元日夕、北陸能登の地を激しい揺れが襲った。住居をはじめ暮らしを支えるインフラが瞬時に壊滅し、多くの尊い命が失われた。水も電気もない苛酷な状況下で懸命の救援活動が行われ、その努力は今も続けられている。本宗でも被災寺院や檀信徒、住民への支援活動が始まった。 本宗では年頭、東寺潅頂院を道場に、最高厳儀である後七日御修法を営んでいる。国土安穏や世界平和など、全ての命の平穏を願う令和六年...
令和六年が幕を開けた。新年号のメインテーマは「平和実現に向けた仏教者の役割」とした。読者各位から貴重な提言を頂いたことに感謝申し上げる。 終息の兆しさえ見せないロシアーウクライナ戦争と激化するパレスチナでの軍事衝突が、憎悪を増しながら対立・分断へと加速度的に向かう世界の最前線の様相を呈している。ミャンマーをはじめ、各地での紛争も止む気配はない。各国の軍拡も進む。そうした極限状況下にあって、我が国...
宗祖御誕生・立教開宗法会から先へ 本年、弘法大師御誕生千二百五十年を迎え、各山、各末寺で慶讃の大法会が営まれ、総本山教王護国寺(東寺)に於いては、真言宗立教開宗千二百年慶讃大法会が営まれた。 御誕生法会では稚児大師尊像が祀られ、産沫が行われ、宗祖の御誕生を祝した。その意味は幼少の大師に産沫することで、生まれてきた全ての子供達が「仏の子である」ことを認識し健やかな成長を願ってのことである。 ま...
イスラム組織ハマスが実効支配するパレチスナーガザ地区にイスラエル軍が侵攻、特に最も人道支援活動の場として尊重されなければならない病院が、ハマスが潜伏しているという理由で激しい攻撃を受けている。 本年は弘法大師御誕生一二五〇年の年であり、本誌は全てのいのちを「貴物」として尊重することを訴えてきた。また仏教徒は「殺してはならぬ。殺さしめてはならぬ」との『ダンマパダ』 (法句経)の教えの如く、不殺生戒...
総本山教王護国寺(東寺)に於いて、十月八日に開白した「宗祖弘法大師真言宗立教開宗千二百年慶讃大法会」は十四日に結願した。また本年は宗祖御誕生千二百五十年にも当り、各山、各末寺でも慶讃の法要が営まれた。 今世界に目を向ければ、ロシアのウクライナ侵攻は続き、イスラエルとガザを実効支配するハマスとの軍事衝突の中で、多くの無事の人々が犠牲となっている。第三次世界対戦勃発の危機すら強く感じる。 宗祖御誕...
大正十二年(一九二三)九月一日に首都を襲った関東大震災では、家屋の倒壊に続いて大火災と火災旋風が起こった。未曾有の複合災害となり、十万五千人以上が亡くなった。百年後の今、その教訓は何を語りかけているのか。 本宗寺院の被災は、東京七ヶ寺、神奈川四十六ヶ寺に上った。この報に接した当時の真言宗各本山会はすぐに救援事業を開始し、慰問団を派遣、全国津々浦々の末寺や教会も、檀信徒を含めて義援金募金の托鉢や犠...
高野山真言宗社会人権局主催の「第三回平和研修会」が去る七月二十四、二十五の両日、大阪府茨木市の総持寺で開催された。 今回の講師は、沖縄守備隊第三十二軍の司令官牛島満中将の孫に当る牛島貞満氏であった。戦後生まれで、小学校の教員だった氏は四十歳まで沖縄に行けなかったが、戦争と平和・祖父に向き合うために通うようになり、証言や戦時資料を集めるようになった。現在は、首里城地下に置かれ、沖縄戦を指令した第三...
宗祖弘法大師御誕生千二百五十年の正当年の中心となる、六月十五日の御誕生会・青葉まつりが各総大本山や各派寺院で盛大に営まれた。各派、各地域の歴史や伝統、信仰に応じた形で営まれた慶讃法要や記念行事は、宗祖の教えの多彩さを表し、全てのいのちを包摂して祝福する曼荼羅世界の具体相を現出したものであろう。我々は真言末徒として、この五十年に一度の勝縁の結願後、捧げられた多様で重層的な祈りを、宗祖がそうされた如く...
御誕生所善通寺をはじめ、本宗各派で弘法大師御誕生千二百五十年記念法要が開白を迎えた。それとほぼ時を同じくして主要七ヵ国首脳会議(G7サミット)が史上初めて被爆地・広島で開催された。サミットの最大の目的は、国際協調による健全な人類の幸福促進であろう。真言末徒として、国際政治がどのように「蒼生の福を増す」共通理解に至るのか、注目した。 善通寺ではまさに大師御誕生の誕生院御影堂で、天竺の聖僧が玉寄御前...
深刻な少子化を受けて岸田首相が本年冒頭「こども・子育て政策」を「最重要政策」として子ども関連予算を倍増し「異次元の少子化対策に挑戦する」と表明した。出生串の向上に向けて児童手当の拡充など様々な施策に取組むという。今月には「こども家庭庁」が発足し「こども基本法」も施行された。全てのこどもや若者が将来にわたって、幸せな生活ができる社会を実現するという目標は、宗祖の済世利人の教えに照らして重要であると思...