令和十六年に迎える宗祖弘法大師御入定千二百年御遠忌に向け、各派で準備が始まっている。宗祖御廟奥之院を信仰の源泉とする高野山真言宗では、すでに記念事業が緒につき、御廟の拝殿である燈能堂の改修工事が竣工。美装を施し、弘法大師御入定所に最も近い地下法場に緊急時の避難階段を増設し、記念燈寵堂前にはスロープを新設する等、荘厳と安全性を両立させた。長谷部真道管長導師による九月十二日の改修落慶法会は、大法会お待ち受け期間の幕開けと言える。
同宗の秋季宗会(九月二・三日)において、九年後の大法会の姿を展望する本格的な議論の口火が切られた。特に大規模な増改築計画が進められている霊宝館の規模や大勢の参拝者を受け入れることになる宿坊の総部屋数などのハード面、集団よりも個人化の傾向が顕著になっている現代人の信仰観にも強く訴える布教や情報発信といったソフト面など、提起された課題は多岐にわたる。日々激変し続ける現代にあって、九年後の世の相は誰にもわからない。しかし、それを不安に思うのではなく、時代の変遷を乗り越えて受け継がれてきた不変の真理、即ち各派で伝持されてきた御教えを見つめ直す安心の期間にしようと決意する時、自ずと我々がなすべきことが見えてくるのではないか。高野山霊宝館をはじめ各派の宝蔵で護持されてきた什物は、そうした不変の真理の具象であり、それらから御入定信仰の核心を具体的に学ぶことは最も有益な研鎖の一つになるだろう。
真言宗最高の聖地である御入定所への帰依を胸に抱きながら、各派で御遠忌に向けた多彩な活動が展開されることを切望する。