能登の現状を見て真の復興を想う

投稿日:2025年01月01日

旧臓臘七、八の両日、川元祐慶高野山真言宗能登宗務支所長(穴水町・明泉寺住職)の案内で、昨年元日の地震と九月の豪雨という二重災害に見舞われた奥能登の八ヵ寺を巡った。想像を遥かに超える被災の深さに言葉を失った。
崩壊した境内で傾きながらも立つ角塔婆や、全壊判定がなされた堂内に貼られたままの三年前の常楽会の配定も目の当たりにした。懸命に倒壊を拒否しているかのような堂宇も見た。散乱した瓦や木材の一つ一つに災害の無情さを見せつけられたが、各寺にはどんなに被災していても法光が宿っているようにも見えた。奥能登が古代からの祈りを連綿と受け継いできた地であることを実感し、この信仰の灯りを決して絶やしてはならないと強く思った。
元日の震災から漸く復興に取り掛かる矢先の豪雨という二重被害が与えた打撃は、計り知れない。しかし今回の取材で出会った御住職や寺族は、復興遅滞の極限の苦難の中にあっても絶望してはいなかった。むしろ、そのお姿から信仰が醸し出す希望さえ感じられた。こうした篤い信仰心が息づく能登半島の復興とは、とりもなおさず、この地で継承されてきた信仰生活を営む環境をソフトとハードの両面から回復させることであると深く確信した。
被災寺院の多くは、公費解体をせざるを得ない状態である。どの寺院も歴史は古く、平安時代や鎌倉時代の諸仏を祀り、開創は奈良時代以前に遡る寺院もある。即ち日本仏教の歴史と危機がせめぎ合う能登を支援することは、日本仏教の過去から現代への千数百年を繋ぎ未来を支援することなのである。
少子高齢化と過疎化が急速に進む地域でもあり、我々が能登復興のためにすべきことは多岐にわたる。その智慧を読者諸賢と共有し実行していきたい。