令和の祖風宣揚に向けて

投稿日:2024年05月25日

昭和五年一月二十五日から九十四年に亘り業務を続けてきた地に別れを告げ、五月十三日に新天地に移転した。本誌百三十四年の歩みに新時代の息吹を吹き込まんと同人一同、身の引き締まる思いで日々の職務に励んでいる。
本誌の前身誌「傅燈」が明治二十三年に創刊され、四十周年を記念して旧地に移転、爾来九十四年の星霜を経た。満州事変から大陸侵出、敗戦の苦難からの戦後復興と高度経済成長、さらには平成のバブル経済の消滅と長引く不況など、時代の浮沈の中での人々の営みを真言密教という窓から捉え、各時代の済世利人・抜苦与楽に邁進する宗徒の足跡を誌面に刻んできた。
そして迎えた令和の新時代、世界は相互に深く関係し合うグローバル化の中で未曾有の秩序を形成しようとしている。世界各地で続く戦闘も国内外の経済危機も一国の努力では解決できず、人々の苦悩も相互に深く影響し合う国際関係の中にある。地球規模の自然災害も日々深刻さを増している。
能登半島地震の被災地に入り、懸命に復旧支援のボランティア活動に汗を流す青年僧をはじめ、国内外の苦の現場で奮闘する本宗僧侶たちがいる。彼らの活動は皆、曼荼羅の諸尊の働きの顕現と言っていい。
人類がかつて経験したことのない混迷の世界に調和をもたらすのは、全てのいのちを包摂する曼荼羅思想ではないか。この信仰を胸に、伝統を継承した新たな祖風宣揚を創造し、宗内外のみでなく、世界に向けて発信することが、新社屋を得た本誌の使命であると決意を新たにしている。
本誌の風雪の重さと先徳の労苦に想いを致すと共に、読者諸賢の叡智をいただき、本誌への倍旧の叱咤激励をお願いするものである。