ロシアのウクライナ侵攻から約六か月、ウクライナの肥沃な国土を焦土と化す侵略戦争が続いている。穀物の輸出が阻止され、世界の食料危機が現実となっている。グローバル化した世界の脅威は、国民を巻き込む戦争である。
本、八月十五日、七十七年目の終戦記念日を迎えた。この凄惨な敗戦で失われた幾百万の尊い命と引き換えに、わが国は、戦争放棄と非核三原則からなる平和国家となった。今日は戦争への、深い反省と平和の維持を全戦没者の御霊に誓い、世界中のあらゆる武力衝突の即時停止を神仏に祈る日である。
戦争は当事者や遺族に深い傷を残した。当事者や遺族が、思い出したくない深い傷を、勇気を持って語ることによって、かけがえのない平和の尊さを伝えてきた。本誌はその意味で戦争を経験した寺院の記憶を掘り起こし、語り継ぎたい。今号にはその先駆けとなる貴重な四編を寄稿していただいた。
戦後生まれの住職が、先人の戦争体験をつぶさに聞き、それを語り継いでいこうとする平和への熱意を強く感じた。戦争体験者の超高齢化が進む中、今求められているのは、この「聞き」 「伝える」という姿勢である。
今後、本誌は戦争経験者の声と戦争経験を継承して語り継ごうとする人々の発表の受け皿となることを表明する。今回のこの四編が、平和を希求する全ての本宗の人々の「語り継ぎたい戦争の記憶」の寄稿に繋がることを念願する。それぞれの寺院に、そこにしかない戦争の記憶があるからである。
明治二十三年創刊の本誌には、日清戦争、日露戦争、大陸侵出、満州事変、日中戦争、太平洋戦争に際し本宗がどう対応したのか、多くの記事が残されている。それを折りに触れて紹介していきたい。