元首相銃撃事件の衝撃と宗教被害への戦慄

投稿日:2022年07月25日

安倍元首相が演説中に銃撃され死亡した。当初「民主主義に挑戦する凶行」と非難する声が異口同音に上げられていたが、宗教者の立場からこの事件の衝撃を受け止める時、狂信的な信仰による献金で破産した母親と、それによって被った容疑者の悲惨な家庭生育環境(宗教被害)に戦慄せざるを得ない。
容疑者の母は宗教団体・世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の信者であることが明らかになった。旧統一教会は信者の家庭を壊すほどの多額の献金や、極度に不安を煽って法外な価格で物品を売りつける「霊感商法」などを行ってきた。先日、カルト宗教の被害者救済を行う「全国霊感商法対策弁護士連絡会」が記者会見を開き、現在も続く統一教会被害を告発した。
母親に統一教会の信仰を強要され、強制的に教団が決めた男性と結婚させられた女性(現在は離婚・脱会)が匿名で証言し、生活力がなく親の庇護が必要な子ども時代に、親の狂信的な信仰によって絶望的な日々を送らねばならない「宗教二世」の悲痛な心を訴えた。会見から、銃撃による元首相殺害という暴力を断固として認めないという姿勢と共に、苦悩の中で信仰を求めて来た人の弱みに付け込み、その財産を根こそぎ奪って家庭を破壊するカルト宗教被害を放置している日本社会への万解の警鐘が鳴らされたと感じた。
日本仏教は、在家の菩薩道という概念を生み、家庭や人々との繋がりを大切にしながら、今生では自分や周囲の人々の現世利益を祈り来世での浄土往生を願うという信仰を育んできた。そこに「幸福になりたければ財産を全て布施しろ」などという宗教のふりをした詐欺が入り込む余地はない。カルトに瑞されない社会を築く為に、仏教界の連帯による正しい布教が必要である。