コロナ禍から見た百年前の祈り

投稿日:2021年02月25日

現代は、世界が一つに繋がったグローバル化の時代である。その特徴は他国の出来事がたちまち自国にも影響することであり、特に今、新型コロナウイルスの世界的感染がそれを証明している。そのグローバル化の幕開けとされるのが、約百年前に世界中で猛威を振るったスペイン風邪の流行である。
スペイン風邪は第一次世界大戦で欧州全土に広まり、日本にも伝染。多くの尊い生命を奪った。帝国主義という弱肉強食の思想が生んだ世界戦争がもたらしたグローバル化の鬼子がこの疫病であり、戦禍と病苦が世界を覆った。
百年前の大正時代の本誌を繰ると、出征兵士の武運長久や戦勝祈祷、戦病死者の追悼と共に悪性感冒(スペイン風邪)退散の祈りが集中的に掲載されていることに気づき、胸が締め付けられる思いがした。そこには「戦争の世紀」と呼ばれた二十世紀初頭に、時代的な制約はありながらも「全てのいのちの救済を切に願う祈り」があったからである。百年前という気がしない。
戦争と疫病が全てのいのちの脅威であることは今も昔も全く変わらない。主に経済面で高度に発達した現代のグローバル化は新型コロナウイルスという疫病の蔓延も加速させたが、数々の課題はありながらもワクチンの世界的分配も迅速ならしめており、日本でも接種が始まった。
こうした平和に基づくグローバル化を発展させていくためには、宗教・宗派を超えた祈りのグローバル化が必要ではないか。グローバル化を人類の破滅ではなく、全てのいのちの共生に向かわせるためには、あらゆる宗教に共通する祈りの共有しかない。百年前の祈りに学びながらコロナ禍を共に乗り越えた先には、更に平和な世界が創造されているに違いない。