核兵器の開発や保有、実験などを全面的に禁じる核兵器禁止条約が去る一月二十二日、批准した五十カ国、地域で発効した。しかし米国やロシアなど全ての核保有国の他、米国の「核の傘」に依存する日本は批准していない。
仏教界の動きとしては、全日本仏教会が「核保有国と唯一の戦争被爆国である日本が、この条約に参加していないことを憂慮する」として、昨年十一月二十日に「核兵器禁止条約の批准を受けて-ヒロシマーナガサキの悲劇を繰り返させないために-」と題しての声明を出している。
今、世界はコロナ禍という人類の生存を脅かす共通の苦しみの中にある。その渦中で全ての生命の脅威となる核兵器を禁止する条約が発効した。
ウイルスの鎮静化も核兵器廃絶の実現も自国だけで達成することは出来ない。世界中の人々がつながることで初めて解決の糸口が見えてくる。
コロナ禍の中で培ってきた「離れてもつながる力」は、核兵器廃絶を進める上で重要なキーワードになるのではないか。そこには他者の境遇への想像力、即ち利他の心があるからである。ここにコロナ禍の中での核兵器禁止条約発効の意義を感じた。他者の平和を自身の平和として喜ぶ心が世界がグローバル化で一つにつながった今、最も求められているのではないか。
この画期的な核兵器禁止条約の発効がなされた背景には被爆者の方々の声と共に平和を希求してきた市民社会の活動がある。そしてその活動を支えた力こそが祈りである。コロナ禍も市民社会の結束なくして乗り越えることは出来ない。二度目の緊急事態宣言下の中での核兵器禁止条約の発効は、コロナ禍にあっても世界の人々の安寧を祈り続けることの大切さを教えてくれた。