新型コロナウイルス感染が縮小に向かい、政府は先月二十五日、緊急事態宣言を解除した。しかし、法事や諸行事が従来の規模に戻るのには、まだまだ時間がかかりそうである。寺院の運営は今後も難渋することは間違いない。
収入が大幅に減少した中小法人等を対象に最大二百万円が給付される「持続化給付金」に、当初は支給対象外であった宗教法人を対象に入れる動きもあったが、宗教団体への公金支出を禁じた憲法第八十九条違反の疑いがあるとして二十七日の閣議決定で除外された。収入減で苦しむ中小の寺院を意識しての動きであったと思う。
今回は給付対象外になったが、将来宗教法人が公的支援金を受け取る事ができると仮定して、必要になるのは明瞭な寺院会計の提示であり、「会計の透明性=社会的信頼」が担保されなければならない。
阪神・淡路大震災や東日本大震災など相次ぐ自然災害の中で、避難所としての寺院の役割やボランティアとして活動する宗教者の社会貢献が宗教の公益性を高め、本堂など諸施設は重要な社会資源として認識されるようになった。コロナ禍による公的支援金の問題は、こうした寺院の諸施設を維持している寺院会計の透明化という課題を浮き彫りにしたと言えるのではないか。
政教分離の原則の中でも、宗教施設の公益性が社会的に重要であることは論じるまでもない。だが近年高まりを見せている宗教法人課税論の理由に、寺院会計の不透明さを挙げる識者もいる。こうした課税論に反論するためにも、まず寺院会計の透明性が求められるのではないか。会計の透明化がもたらす社会的信頼は、寺院の公益性を維持することに繋がるだろう。