続くコロナ禍、寺院を心の結集所に

投稿日:2020年05月25日

新型コロナウイルス感染確認者の数が減少傾向にある中、政府は今月十四日時点で、全国対象の「緊急事態宣言」を三十九県で解除した。しかし事態が終息したわけではなく、感染の第二波、第三派を警戒しながらの「新しい生活」を続けねばならない。気を緩めれば感染爆発の危険性は常にある。

東日本大震災以来、日本社会はそれまで蔓延していた個人主義を反省し、「人々の絆を結び直す」ことを大切にしてきた。特に寺院は、心の拠り所として人々が集まりやすい場所になるよう取り組みを進めてきた。しかしコロナ禍は、寺院という場で人々が心身ともに密接に繋がろうとする「絆」を断ち切ろうとしてきた。感染リスクが高まる「密接・密集・密閉」を避けるため、やむなく法事等の諸行事の自粛や縮小、境内や堂宇等の閉鎖が行われた。

だが、寺院に人々が集えない中、最新のソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を駆使して直近では総本山金剛峯寺などが法要をライブ配信し、離れていても大勢の祈りを繋ぐ活動が宗教界全体で行われ始めた。感染者や医療従事者に向けられた差別や中傷という、社会を分断する「心の感染」に対して、社会全体でコロナ禍を乗り越えようと多くの宗教者がメッセージを出し続けている。今、この瞬間も、在宅で写経や写仏などの個人の祈りがなされ、そうした祈りを写経奉納などの形で結んでいる寺院も少なくない。

感染防止の為、外出を極力減らすなど、長期化が予想されるコロナ禍の中、浮かび上がってきたのは、離れ離れになっている人々の心を結びつける役割が寺院にはある、という古くて新しい大命題である。このことを胆に銘じ、緊張感を持ってコロナ禍終息を祈り続けることが改めて求められている。