再び、天下大疫に際し心経秘鍵の祈りを

投稿日:2020年04月05日

新型コロナウイルス感染症の拡大が止まらない。前々号の社説で論じた般若心経秘鍵上表文に説く「天下大疫」が、「地球規模」の大疫となっている。
欧州では患者だけでなく多くの医療従事者がその職責を果たしたが故に感染し死亡している。そして感染者の葬儀を行った聖職者も感染し、死亡したことが報じられている。日本でも連日、感染者の増加が発表され、その中に医療従事者らも含まれている。新しいウイルスと闘う人々の悲報や苦難を知った時、我々にできることは何もないのか。やはり「祈る」ことしかない。 ウイルスの苦しみや恐怖を現実に解決するのは特効薬の開発であり、「祈り」ではないかもしれない。ウイルス蔓延による社会不安に実際に対応するのは政府や自治体の施策であり、「祈り」ではないかもしれない。しかし、「祈り」は、そうした人智の計らいを超えて、大いなる智慧に帰依しようという強い衝動でもある。自身の置かれた環境で感染防止策を徹底した上で、感染者の回復やその看病に当たる人々の安全、亡くなった人々の追悼、そして早期終息を懸命に神仏に祈ること。ただその行為に成り切ることである。
古代から飢餓、疫病、戦争が人間存在を脅かす三大要因であるといわれている。それは今も変わらない。弘法大師や嵯峨天皇の時代にもこれらが蔓延し、その後も繰り返し続いた。その苦しみからの救いを求める信仰が上表文には、染み込んでいるように思われる。
新型コロナウイルスという大疫に苦しむ世界中の人々への連帯(同悲)の精神は、「祈り」から生まれる。そして、ここから「天下大疫」退散の突破口が見出せるのではないか。(令和2年4月5日号)