男女共同参画が拓く本宗の未来

投稿日:2024年03月05日

社会で男女共同参画が謳われて久しい。仏教界では寺院後継者としての立場や宗団活性化における活躍など諸分野で、女性僧侶や女性寺族が存在感を増している。これは本宗の未来を考える上で、極めて良い傾向と言っていい。
だが、女性を受け入れる環境や女性僧侶を育成する体制は十分だろうか。数年前に開かれた本宗のある宗派のパネル討論でパネリストの女性教師が「女性が僧侶になろうと発心した時に男性と同じように女性を受け入れる修行道場がなければ機会均等とは言えない」と指摘し、当該宗派に「女性僧侶養成の環境を整備してほしい」と求めた。一方、別の宗派で十数年前に初の女性教区長となったある住職は、自身を男性住職と「同じ生き方をしているタイプ」とし、「男女共学の延長という感覚で、男の人と同じ生き方をしている中で教区長という役職が回ってきたのではないか」と話していた。女性が活躍できる制度的基盤の確立と風土の醸成は、今も最も重要な課題である。
一部の宗派では女性宗会議員も誕生した。しかしまだまだ少数で、支所長など宗内役職に女性はほとんどいない。男性僧侶に対する女性僧侶数の少なさもあるが、各派で女性登用の環境整備を検討する必要があるのではないか。
高野宗では令和三年に規則を改正し、寺族婦人を具体的に保護する文言を追加する改正を行った。規程上明確ではなかった女性寺族を定義した意義も大きい。現実、寺院は寺族の協力なくしては運営することはできない。こうした規則改正は、寺族の立場を安定化し、寺族(庭)婦人会の活動活性化の土台作りの一環ともなるのではないか。今後、寺族から住職になる女性はますます増えていくに違いない。未来に向け、その環境整備が求められている。