緊急事態宣言の中での宗教者の役割

投稿日:2020年04月25日

去る十六日、七都道府県に出されていた緊急事態宣言が全国に出される事態となった。新型コロナウイルスの感染拡大の中で、宗教者にとって緊急事態が意味することは何なのか。
事態が深刻化する中で、新たな動きが宗教界でも起こり、社会に向け、寺院、檀信徒に向けて、より具体的な発信を始めている。全日本仏教会では、鎌田隆文理事長名で「寺院関係者は、日常的な自己管理を徹底し、媒介者とならないよう行動する」ことを表明。また加盟団体の対応もホームページ上で公開しているが、豊山派では教師で、医学界の専門家の二師に委嘱し「法要時の新型コロナウィルス感染拡大を防止するための指針」を作成していることは特筆に値することである。醍醐寺では十六日新型コロナウイルス退散の護摩供が壁瀬執行長導師のもと営まれたが、医療関係者に敬意と感謝を表する意味で、五大力尊御影を無償で授与することにした。
日本赤十字社では「新型コロナウイルスの三つの顔を知ろう~負のスパイラルを断ち切るために~」で 、第一の感染症は「病気」、第二の感染症は「不安と恐れ」、第三の感染症として「嫌悪、偏見、差別」の三点を指摘している。この内の第二、第三の二点が、感染拡大の中で、人々の心の中に蔓延していくことが、宗教者にとっての緊急事態ではないだろうか。
我々にできることは早期の終結への神仏への祈りであることは言うまでもない。一方で、必要以上に行動することが制約されている社会状況ではあるが、公開されている様々な情報を共有して、不安、恐れによる嫌悪、偏見、差別の事象が発生しないよう務めることも重要なことではないか。(令和2年4月25日号)