志納型宗費制度を支える帰属意識の向上

投稿日:2025年06月15日

高野山真言宗では、春季宗会で決定した志納型宗費制度の令和八年度からの自己申告開始に向けて、各支所の現場レベルでの説明が始まっている。
現場では、自己申告した賦課金が、どのような施策に活かされるかに関心が集まっていた。災害時の復興支援や困窮寺院の存続、あるいは解散合併の支援、子弟教育と後継者問題など、宗派でなければできない末寺を支える施策の可視化がより重要性が増していると感じた。
志納型宗費制度を支えるのは、「この宗派に所属していて良かった」という一ヵ寺一ヵ寺の帰属意識の高さである。これを維持・向上させるのに必要な施策は、毎年発生する大規模災害への備えと被災時の迅速な復旧支援である。単独の寺院の力ではソフト・ハードの両面で復興することは困難であり、宗派という助け合いの仕組みが必要だからである。
子弟教育や後継者紹介等の支援も同様である。人口減少による縮小社会が急速に進む中にあって、宗派の施策によって支えられているという安心感は、これからの寺院運営にとって最も大切なモチベーションになると思われる。
こうした安心感に裏打ちされた帰属意識の醸成には、地域の声を施策に反映させる宗会の責任もより重大になる。高野宗の宗費制度の大転換は、自宗のみならず真言宗、更に仏教界全体にも好影響を与える可能性を秘めている。
日本仏教は宗派仏教と言われる。宗祖とそれぞれの総大本山の元に集まった同じ信仰を持つ寺院群が、各寺院の経済状態によって自主的に納付した浄財によって助け合う単位、それが宗派である。そのように言い切ることができるようになった時、志納型宗費制度も完成したと言えるのではないか。