分断の世界に橋を架ける菩薩行を

投稿日:2025年05月25日

ローマーカトリック教会のフランシスコ教皇が逝去された。人々を分断する壁ではなく、人々が連帯するための橋を架けることを呼びかけ続けた生涯だった。そのメッセージは、平和を求める人々にとって国・民族・宗教の垣根を越えた共通の行動指針となっている。分断を超克する橋とはなにか。
今、世界は超大国が主導する関税という経済的分断、ウクライナやミャンマーなど各地で続く戦争・内戦という命の分断で覆われている。インド・パキスタンという核保有国間の戦闘は、破滅への分断の引き金と言える危機的様相を帯びていた。宗教者に課されている喫緊の責務は、対立のある所に和解の橋を架けることである。宗教者が信頼の橋で繋がり合わねばならない。
平和の最大の条件は人権の尊重であり、最悪の人権侵害は戦争である。人権の尊重がある処には、戦争の芽は育つことはない。
「同和問題にとりくむ宗教教団連帯会議」 (同宗連)は、差別戒名など宗教における差別事象が厳しく問われたことへの真摯な懺悔の上に立って昭和五十六年に結成された超宗教のネットワークである。四月からその議長教団に高野山真言宗が就任した。その役割は各宗教教団を繋ぐ人権尊重の橋をより強固にし、差別のない社会への道を拓くことであり、そのための研鎖と啓発を行うことにある。本当の平等社会は、この繰り返しでしか実現できない。
世界が分断の危機に瀕する中で、高野宗が議長教団となった意義は大きい。人々を時代の激流から守り、安心の中で次世代へと渡す橋は、「生かせいのち」の表象である。本宗寺院と僧侶が率先して差別解消の橋を架け、真の平等社会への道を拓き、その力を世界の平和構築に振り向けていきたい。