今年は第二次世界大戦終結から八十年。我が国にとっては国土が焼け野原と化した敗戦から復興して八十年の節目を迎える。そして来る四月十三日から十月十三日まで、大阪・夢洲に於いて半世紀ぶりに二〇二五年日本国際博覧会(略称「大阪・関西万博」)が開催される。世界を巻き込んだ八十年前の終戦から今日までの歩みと、世界が「いのち輝く未来社会のデザイン」のテーマのもとに集う大阪万博に共通するメッセージは、平和の尊さであろう。
最先端の科学技術がもたらす幸福が体感できる万博は、世界を未来志向で繋ぐ。しかし、最先端の科学技術を搭載した兵器の開発は常に人類の今を脅かし続ける。八十年前の最先端科学が原子力であり、広島と長崎に投下された二発の原爆という史上最悪の兵器に使われた。開発された科学技術そのものに善悪はなく、それを駆使する人間の心によって正邪が決まるのである。
この八十年間も世界各地で戦火が止むことはなく、兵器も科学技術の進化と共に(イテク化している。むしろ軍事の分野で、科学技術は進化を速めているようですらある。数々の新開発の兵器はより悲惨な戦禍を想起させる。
戦後八十年と万博開催を同時に迎える今、科学技術の発展を兵器の進化に結びつけてはならないという平和の理念で世界は連帯しなければならない。
万博の会場は円形であり、密教的に見れば胎蔵曼荼羅中台八葉院である。各パビリオンが調和しながら現代文明が築き上げる幸福を発表し合う場になる。それは科学技術による平和曼荼羅と呼ぶべき光景ではないか。
戦後八十年と今回の万博開催を契機として、殺し合う戦争ではなく、互いを認めて生かし合う道に至る平和曼荼羅の心を、世界中に強く発信したい。