衆議院選挙が終わり与党は過半数を割る結果となった。「政治と裏金」をめぐる問題など政局が大きく影響する中での選挙となったが、目を国際関係に転ずれば政治と平和の問題が今ほど問われている状況もないのではないか。
各政党・候補者の公約や主張の中で平和政策がアピールされていたが、その平和とはどのような質の平和だったのか。我々は仏教者の視点で仏法に照らして判断しなければならない。なぜなら、戦争への準備は常に平和を守るというフレーズに隠されて進められるからである。今回の選挙結果で、与党は改憲可能な議席数を失った。改憲の最も重大な切所は、戦争放棄と戦力不保持の憲法第九条である。衆院選直後の今、様々な政策が各党から提示される中で、憲法や平和に対してどのようなビジョンを持っているか、選挙後の今だからこそ、改めて確認する必要があるのではないか。
連日報道されるウクライナやガザでの悲惨な戦禍に胸を痛めると同時に、軍事大国化と核武装を急速に進める東アジアの情勢に強い不安を覚える。東アジアの平和も危うい均衡の上に辛うじて保たれていろとの思いを禁じ得ない。平和を維持する外交も、宣戦布告に踏み切る判断も政治の中で遂行される行為であり、それはどちらも「平和を守るため」という文脈でなされる。
八十年前の核被爆から敗戦という未曽有の悲苦を経験した日本国民として国内に真の安心をもたらし、海外には平和を輸出する国家になさなければならない。仏教者の投票行動は、そのためにあるといっても過言ではないのではないか。来年は参議院選挙がある。政治改革が叫ばれる中で、平和政策はどう位置付けられるか。このことを肝に銘じて政治を注視したい。