今年のノーベル平和賞を全国の被爆者でつくる日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が受賞した。
原爆投下から七十九年、「核兵器の廃絶」を訴え続けてきた被爆者の声と活動に光が当たったことを喜ぶと同時に、今ほど核兵器使用の危機に世界が直面している時代はないと思わざるを得ない。そうした危機感を世界に発信し、人類が核軍拡ではなく核廃絶を選ぶ歴史的分岐点に、今回の受賞が位置づけられるよう、平和への取り組みを加速させねばならないと感じた。
被爆地にある御住職の一人は被団協の受賞を受け「広島の原爆ドームや長崎の平和記念公園は『一瞬にして奪われた悲惨な世界』を物語る強いメッセージ性を持っているが、原爆の地獄は、原爆投下後の世界に投下された『一瞬』で終わらず、現在に至るまで続く苦しみをもたらした。地獄を作り出した『一瞬』とともに、その後に生まれた『長く続いた地獄』にも目を向けていきたい」と語った。被爆地の御住職は皆、それぞれの立場で核廃絶の活動を続けたいと決意を新たにしておられた。この決意に強い連帯を示したい。
核兵器の恐ろしさを訴え亡くなった方々の声を引継ぎ、今も被爆体験者として平和活動の最前線におられる被爆者と共に、今を生きる私たちとこれから生まれてくる次世代の為に平和実現の曼荼羅を描かねばならない。過去・現在・未来の三世に亘る平和を実現する使命が仏教者にはあるからである。
日本は世界で唯一の戦争被爆国でありながら、核兵器禁止条約にも批准していない。米国の「核の傘」の下の平和か、核廃絶による真の平和か、真言密教の智慧に照らせば答えは明確である。