総本山教王護国寺(東寺)に於いて、十月八日に開白した「宗祖弘法大師真言宗立教開宗千二百年慶讃大法会」は十四日に結願した。また本年は宗祖御誕生千二百五十年にも当り、各山、各末寺でも慶讃の法要が営まれた。
今世界に目を向ければ、ロシアのウクライナ侵攻は続き、イスラエルとガザを実効支配するハマスとの軍事衝突の中で、多くの無事の人々が犠牲となっている。第三次世界対戦勃発の危機すら強く感じる。
宗祖御誕生法会に共通したキーワードは「貴物」であり、幼きいのち、そしてあらゆるいのちを「貴物」として慈しむことである。世界がいのちの危機にさらされている今、全てのいのちを「貴物」として尊重しあう教えに改めてたちかえる時である。
宗祖は、千二百年前の立教開宗の年である弘仁十四年(八二三)に、嵯峨天皇より密教の根本道場として東寺を賜って講堂を建立、そこに立体曼荼羅二十一尊をお祀りし、曼荼羅の世界を顕わされた。
宗祖が讃岐の地に「貴物」として生を受けられ、真言宗を立教開宗されたのは、人間ばかりではなく、宇宙に遍満する全てのいのちの安寧の世界、曼荼羅の世界を建立することを誓願とされたからである。
今回の二大法会は、世界各地での戦争や世界を蔓延したコロナ禍の漸くの終息、また世界的規模の自然災害の鎮静化を願って結願を迎えた。
「尽きぬ願いに祈りは続く」。これは立教開宗法会のテーマである。曼荼羅の思想を基に、宗祖御誕生と立教開宗の祈りの精神を世界に広げ、何より世界各地で続いている戦争の終結を祈りたい。