コロナ禍の中で、宗会シーズンが開幕した。近年、無住寺院や不活動法人の解散について質疑が交わされることが多くなってきた。
臨済宗妙心寺派の無住寺院対策委員会では、このほど二ヵ寺に対して寺院解散補助金(合計三〇〇万円)を給付する答申を示した。今後、給付が必要となる寺院の増加や堂宇の解体費用等の諸経費の高騰が予想されることから、給付金年間予算三〇〇万円の増額要求を答申に盛り込んでいる。
末寺寺院の繁栄こそが宗派興隆の基礎だが、各派とも多くの住職が、兼務しながらそれぞれの兼務寺院の法灯も護っているのが現状である。また檀信徒が少ないため、兼業しながら護持している寺院も多い。解散、合併を進めることは極力避けるべきであろうが、今後、過疎化が進む等の理由により更に檀信徒が激減し、法灯護持が困難となってしまった場合、解散や合併を選択せざるを得なくなるケースが増加することが予想される。
本宗のある寺院では、後継者がなく、信徒も減少していく中で、住職が役員と協議して解散を決意し、きちんと解散法要まで奉修した。住職権を失うのに伴い、所縁寺院の徒弟となり、宝物はその寺院に寄託、財政に余裕があったため、堂宇は解体することができたが、こういうケースは稀であろう。
財政的にも苦しくなり、堂宇が荒廃し、住職が遷化して、後継者もなく、 「不活動法人」となり、手の施し様のない状況が生じてくるのではないか。解散や合併を勧めるわけではないが、朽ち果てたお堂に本尊だけが残ってしまうような悲惨な状況を招かない為、断腸の思いで法灯護持を断念せざるを得ない寺院への、宗派規模での対策と援助を講じる必要があろう。