本宗各派は、それぞれの時代の要請に応じ人材育成という社会的責任を果たしてきた。では現代社会における宗団の教育面で果たすべき役割とは何か。
智山派教学振興会はこのほど、奨学金貸与事業を行う独立行政法人日本学生支援機構発行の債券「ソーシャルボンド」に投資し、公益性の高い資産運用という手法で、広く一般学生を支援するという新しい取組みを始めた。
仁和寺では、高校生以下の拝観料を次世代への文化支援として無料としている。一人でも多くの青少年に千年の信仰が育んできた本物の文化財に触れてもらい、その瑞々しい感性を開花させてほしいという願いが込められている。寺院という文化的資源を公益のために活用する、古くて新しい取り組みである。醍醐寺でも、命の循環や心の教育を目的とした「京の杜プロジェクト」が長年行われているほか、「生かしてこそ文化財」の理念のもと文化財鑑賞授業や博物館実習などで地域の生徒や学生を積極的に受け入れている。
また高野山大学が大阪河内長野市に新設した教育学科では、キャンパスを共有する大阪千代田短大と共に河内長野市と連携協定を結んだ。小学校教員や幼稚園教諭、保育士などを目指す学生のために、市が学生の地域体験学習をバックアップする体制を構築したもので、新しい学びの場の創出だと言える。種智院大学ではひとり親世帯等の学生に対する就学支援制度や返還不要の奨学金等厳しい時代での学びの場を守る制度を実施している。
教育面での社会的責任の果たし方について、数例を挙げたが、共通しているのは、次世代を育てたいという温かい視座である。この視座に立っての様々な活動が、本宗各派の特色ある方法で展開されていくことを期待したい。