「天下大疫」撲滅のために祈りの結集を

投稿日:2020年02月25日

中国の内陸都市に発したとみられる新型コロナウイルスによる肺炎の感染者が、世界中で増加の一途を辿っている。国内でも連日、各地で感染者の増加が報じられている。二十一世紀、科学万能の時代となっても、新たな感染症の出現が人間存在の脅威になることは人類史上で変わることはない。現代の医学や免疫学を駆使し、世界規模で感染拡大を止める闘いが寸暇を惜しんで続けられている。この緊急事態に、宗教者たる我々がなすべき事は何か。
一昨年秋、大覚寺での「嵯峨天皇宸翰勅封般若心経千二百年戊戌開封法会」奉修にあたり、本誌は「弘仁九年の春の天下大疫」に際して、弘法大師の勧めにより嵯峨天皇が天下静謐の祈りを込め、般若心経一巻を書写したとする「般若心経秘鍵後記」を取り上げ、紛争、テロという増悪の連鎖、貧富の差の拡大、地球環境の破壊など、「地球規模の大疫」に対し、世の安寧と平和を願う人々の想いを結集する開封法会にしたいと論じた。その法悦も冷めやらぬ今、現代の「天下大疫」というべき新型ウイルスの蔓延に直面している。
疫病や飢餓、戦争など人々を苦しめてきた悲惨な歴史を背景に「心経秘鍵」の祈りは般若心経写経の実践という形で、多くの人々に受け継がれてきた。
世界はグローバル化によって一つになっており、他国で起こった苦難が我々にとって決して無関係ではない。今回の新型ウイルスの出現が、この厳然たる事実を我々にまざまざと示している。
今、世界を恐怖に陥れている「天下大疫」を前に、「般若心経秘鍵後記」を信仰してきた全ての時代の先徳の祈りに思いを致し、我々は祈りで世界を繋げなければならない。今こそ般若心経写経の実践に取り組むべき時である。(令和2年2月25日号)