G7サミット開催と御誕生法要の祈り

投稿日:2023年06月05日

御誕生所善通寺をはじめ、本宗各派で弘法大師御誕生千二百五十年記念法要が開白を迎えた。それとほぼ時を同じくして主要七ヵ国首脳会議(G7サミット)が史上初めて被爆地・広島で開催された。サミットの最大の目的は、国際協調による健全な人類の幸福促進であろう。真言末徒として、国際政治がどのように「蒼生の福を増す」共通理解に至るのか、注目した。
善通寺ではまさに大師御誕生の誕生院御影堂で、天竺の聖僧が玉寄御前の懐に入り懐妊する奇瑞が表白で読み上げられた。また「いのちよ輝け~大師のみこころと共に~」をスローガンとする高野山では「尊き稚児大師の如く、世代を担う世界の子達の健やかなる成長を祈念する」と啓白文を表白して開白した。そこには、一人ひとりのいのちが等しく尊く、全てのいのちのやすらかな成長を願う御誕生説話の祈りが込められている。
一方、世界ではウクライナ戦争が長期化。核の脅威を示すロシアから祖国の国土を防衛するための支援を求め、ウクライナのセレンスキー大統領が急きよ来日し、広島平和記念資料館で被爆直後の広島を見て自国の惨状と重ね合わせた。その姿は、悲痛以外の言葉では表現できないであろう。
軍事要請に奔走するセレンスキー大統領に期待し、「この戦いに勝利し、ロシア軍を領土から追放しなければ祖国にも世界にも平和はこない」と主張するウクライナの人々。国際社会、そして絶対的な平和を旨とする仏教者は、この重い現実にどう向き会い、行動すれば良いのか。被爆地で発せられたG7声明が、世界をどこに導こうとしているのか。我々は苦悩しつつ自身の信仰に照らして、厳しく問うていかねばならない。