御誕生説話にみるこどもへの眼差し

投稿日:2023年04月25日

深刻な少子化を受けて岸田首相が本年冒頭「こども・子育て政策」を「最重要政策」として子ども関連予算を倍増し「異次元の少子化対策に挑戦する」と表明した。出生串の向上に向けて児童手当の拡充など様々な施策に取組むという。今月には「こども家庭庁」が発足し「こども基本法」も施行された。全てのこどもや若者が将来にわたって、幸せな生活ができる社会を実現するという目標は、宗祖の済世利人の教えに照らして重要であると思われる。
「蒼生の福を増せ」との、宗祖がご帰朝の前に師恵果和尚から授かった言葉は、宗祖のご生涯を貫き「全てのいのちを せにする」活動に精進された。
宗祖のご生涯を描いた弘法大師伝の御難話を紐解くとそこには幼少の「真魚」が「貴物(とうともの)」と呼ばれ大切に育てられている場面が続く。それはご両親ばかりでなく、ご両親を取り巻く人々や仏天までが、 「真魚」を「貴物」と呼び、幼少期の宗祖の中に光り輝く仏性を感じ取り、地域全体で育む様子に深い感動を覚える。
現在の家族の形は多様化し、変化し続けており、それに伴いこどもを取り巻く環境も複雑さを増している。しかし、変わらないのは全てのこども達が等しく尊いいのちを持った「貴物」だという事実である。今こそ私達は「貴物」として、仏を拝むような心をもって、全てのこどものいのちと成長、また未来に向けての希望や可能性までも見守り育むべきではないか。
「こども基本法」が施行されたのと時を同じくして宗祖御誕生千二百五十年の勝縁を迎えたのは偶然ではない。この勝縁を通じて、全てのこども達を「貴物」として育む御誕生説話の眼差しを広く社会に発信していきたい。