高真青の時空を超えた祈りに想う

投稿日:2022年12月15日

高野山真言宗青年教師会では、去る十一月三十日に「弘法大師潅頂開壇千二百年記念事業~東大寺と密教~」を奈良華厳宗大本山東大寺で執行した。
弘法大師は帰朝後、弘仁十三年(八二二)に、東大寺内に潅頂道場(真言院)を建立、当時国家仏教の中心地であった東大寺にいち早く密教を導入されており、平安時代の法令集「類聚三代格」には「空海法師をして東大寺において国家のために潅頂道場を建立し、夏中及び三長斎月(正月・五月・九月)に息災増益の法を修さめ、もって国家を鎮むべし」と記されている。
この度の青年教師と東大寺の僧侶による、聖武天皇の大仏造立の発願と弘法大師のご誓願に共通する鎮護国家を祈る大仏殿での記念法会の読経の響きは、実に感動的であった。そこには千二百年前、弘法大師が真言院を建立されたご精神を令和の時代に継承しようとする青年教師の高い志が感じられた。
同会では今期執行部テーマを「原点回帰」とし、宗祖の教えを正しく理解するためには、奈良仏教と真言密教の繋がりや東大寺との関連を学ぶ重要性を強く認識し、佐伯俊源種智院大学教授による教学研修会や大阪市立美術館内藤栄館長による記念講演会を開催、会員一同研讃を深めると共に、前日の二十九日には宗祖への報恩謝徳として溌頂道場の清掃奉仕も行った。
奈良時代の東大寺大仏建立の背景には天然痘による疫病の流行があった。そして、現代の疫病である新型=ロナウイルスが世界中に蔓延しており、またロシア軍のウクライナ侵攻も続いている現代、青年教師が東大寺と宗祖との関わりを深く学び、東大寺の僧侶と共に、大仏御宝前に於いて国家安泰、人心安寧、世界平和を祈念した意義は誠に大きいものであった。