環境破壊と戦争の時代の終結を

投稿日:2022年09月05日

「比叡山宗教サミット三十五周年記念・世界宗教者平和の祈りの集い」が八月四日、「気候変動と宗教者の責務」をテーマに開催、採択された「比叡山メッセージ二〇二二」では、ロシアに対して、ウクライナからの即時撤退を強く求めると共に、「戦争は人間による最大の環境破壊の行動であることを心に刻むべきである」と訴え、比叡山上から世界に向けて発信した。
戦争も環境破壊もいのちを損なう行為である。人間だけでなく全ての動植物のいのちを差別せず、森羅万象にも、人間と同じいのちが宿ると考える真言密教にとって、戦争と環境破壊は同義語と言っていい。
我が国は戦後七十七年、「平和」と呼ばれる状態を保ち、経済的な繁栄を得てきた。しかしその「平和」は核を保有する軍事大国同士の牽制の中でかろうじて保たれてきた、恐怖の均衡の上に立つ危うい平穏ではなかったか。
物質的な繁栄は、自らの生存を支えてくれる大地や海洋を汚染しながらの享楽ではなかったか。両者の果てに待つのは、全てのいのちの破滅しかない。
全てのいのちは大日如来の化現であると観る真言密教の思想には、戦争と環境破壊という喫緊の地球的課題に対して、新たな解決策と指針に繋がる視座が数多く含まれている。こうした真言密教の智慧を、真言宗徒である我々自身が見出し、グローバル化した世界に発信していかなければならない。
そのための糸口は、世界の諸宗教者との対話の中にあるのではないか。宗祖弘法大師と共に平安仏教を開かれた伝教大師の比叡山からのメッセージは、真言末徒にも環境破壊と戦争の時代終結への協働を呼びかけている。