コロナ禍で始まった宗団再創造への胎動

投稿日:2022年03月05日

真言宗千二百年の歴史を幡く時、苦難の時代の中で宗団の未来を切り開いていった先徳の姿が次々と脳裏に浮かぶ。伝統教団の一つである本宗は、長い歴史の中で様々な宗教的営為を蓄積し、そこから紡がれた普遍の真理を各時代に合うように再創造してきた。コロナ禍が続く現在はどうだろうか。
智山伝法院は二月八日、特別講習会「弘法大師教学の展開-激論 新義教学四古義教学-」を開催し、気鋭の研究者である四師が法身説法について「衆生救済」の視点等を盛り込んで妥協のない厳しい議論を行った。同十六日には、高真青結成四十五周年記念事業の布教研修会「真似できる法話」が開かれ、桐生教学部長、高畑本山布教師会会長ら布教の最前線に立つ各師の模範布教等を通して、人々にいかにして安心を届けるか、徹底的に研修した。
古来、教学を深く掘り下げ、仏法が説く智慧の光を明らかにしてきたのは学僧同士による問答、すなわち論義である。そして仏法の光をあまねく世に広めようとする営みが布教・法話である。今回の智山伝法院と高真青の取り組みから、真言教学の真理を現代の論義の中で究明し、現代に合った真言密教の布教法を摸索する、飽くなき情熱を感じた。宗団が存立する歴史的・社会的意義にも直結する取り組みと言ってよく、同テーマの継続を要望したい。
さらに御室派ではこのほど、未来に向けて宗団の形そのものを根本的に問い直す宗制検討委員会を立ち上げた。ここで、どんな宗団像が提起されるか。
伝統はただ墨守するためにあるのではない。それを尊重して学びながら、新たな智慧を再創造することが常に求められている。コロナ禍で始まったこれらの試みを、宗団再創造の胎動とし、アフターコロナの飛躍に繋げたい。