九州七月豪雨災害一周年に想う

投稿日:2021年07月15日

令和二年七月の九州豪雨災害から一周年を迎えた。去る七月四日、球磨川の氾濫により、関連死含め二十一名が犠牲となった熊本県人吉市内でも、慰霊と復興に向けての様々な行事が行われた。
伽藍全体が水没するという甚大な被害からの復興に取り組んでいる大覚寺派高野寺住職味岡戒孝師が導師を勤めた下青井町地区、高野宗青年教師会の災害救援ボランティア基地となった熊本宗務支所下南光院、超宗派の熊本県仏教会主催の浄土真宗本願寺派人吉別院での慰霊復興法要を取材した。
参列者の声として「一年前の死を覚悟した瞬間、知人の理不尽な死、なす術もなく倒壊する我が家、一年経過しても復興が進まない不安、そして九死に一生を得たことと、救援活動をしたボランティアへの感謝」を口にした。
三ヵ所での一周忌法要はこうした不安を吐露し、地域の絆を確認する安心の場となっていた。被災から一年、そして日本各地で災害が頻発する中で何が問われているのか。特にコロナ禍の中で、復興支援の在り方が問われたように思われる。即ち感染予防のために、十分なボランティア活動を受け入れることが出来ないなかで、どう活動するか模索された点なども挙げられる。
災害列島と言われる国土で暮らす我々は、常に自らが被災寺院となる危険性を含んでいる意識を持つこと、檀信徒や地域住民も被災するという危機感を持つことが、極めて重要である。その危機意識を近隣寺院や地域住民とも常に共有し、自助や共助のネットワークの中で寺院が被災者救援の場となれるような体制を構築することが大切である。一周忌法要は亡き人を追悼し、これからの復興を通して、より安全な地域に再生することを誓う場となった。