高野山執行長選が拓いた一宗公選制の可能性

投稿日:2021年06月15日

三師が立候補した注目の金剛峯寺執行長(高野山真言宗宗務総長)選挙は、去る六月九日開票が行われ、前宗会議員の今川泰伸師が当選した。
平成十五年に宗務総長の一宗公選制を導入してから、今回初めて候補者が複数となったために全末寺投票も初めての実施となった。宗務行政の最高責任者たる宗務総長を有権者(全正住職約二千五百人)の民意で選ぶ過程で、宗団の課題となっていた宗政への無関心を払拭し、宗団への参画意識を高揚させることになった。有権者から「宗団、本山、祖山護持、学園、記念事業等について今回程、関心を持って考えたことはなかった」との声も聞かれた。
この宗団参画意識高揚の原動力になったのが、三候補が発表した選挙公約である。諸政策は異なるが、目指す所は同じ宗団・本山の興隆発展であった。
すなわち、宗本の興隆発展という同じ山の頂に至る異なる三本の道(政策)を示したのが三候補の選挙公約である。道は違えど目標は同じ、古歌に「分けのぼる麓の道は多けれど 同じ高嶺の月を見るかな」とある通りである。
有権者の多数の賛同を得た今川師の公約を今後四年間の道として高野宗は歩むことを選択したが、同じ目標を目指す安藤師、岡部師が公約で示した道との間に優劣があったわけではない。惜しくも落選となった両師の公約にも多くの民意が集められた。この民意を十二分に活かすために次期宗務総長に決定した今川師には、最多得票を得た自身の公約を実現するためにも両師の公約の汲むべき所、学ぶべき所、協議すべき所を積極的に自身の政策に取り入れてほしい。そして今川新内局が歩む道を全宗団人が一致団結して共に歩んで行ける一本の大道にし、更なる興隆へと宗団の活路を切り拓いてほしい。