大師号下賜千百年記念法会に想う

投稿日:2020年11月02日

高野山真言宗総本山金剛峯寺では、延喜二十一年(九二一)に醍醐天皇から「弘法大師」の諡号を賜ったことによる「大師号下賜千百年記念法会」が、十月十七日、奥之院燈籠堂で開白。全国九ブロックの地域伝道団役員による写経奉納法会が十八日から二十六日まで営まれ、二十七日に結願を迎える。
宗祖が御入定された承和二年(八三五)から八十六年後に、東寺長者観賢僧正の尽力により大師号が下賜された。「弘法」という諡号には宗祖のご生涯、即ち唐で師である恵果和尚から賜ったお言葉「蒼生の福を増せ」を胸に帰朝され、「弘法利生」に尽くされたことへの尊崇の念が込められている。
この「弘法大師号下賜」という勝縁は、入定信仰と密接不可分の形で「弘法大師伝」の中に記されている。下賜伝達と檜皮色の御衣替えのため観賢僧正が弟子淳祐師を伴って奥之院御廟の扉を開き、生きたまま禅定に入っている宗祖とお会いしたとされる入定信仰は、高野山浄土信仰の原点ともなった。
今回は、コロナ禍の中で大規模な団参の実施は難しくなったが、檀信徒から寄せられた多くの御宝号の写経を各地域伝道団役員が代参して大師ご宝前にお供えする写経奉納式も連日行われる。コロナ禍が続く中で、時間も空間も超えて真の安心を与えてくれる弘法大師信仰を呼び覚ます取り組みであったので、写経奉納を通して檀信徒が弘法大師と結縁した意義は大きかった。
奥之院を思いながら、弘法大師諡号下賜から誕生した御宝号「南無大師遍照金剛」を念誦して写経する時、その隣にはお大師さまが居てくださる。コロナ禍の不安の中で迎えた諡号千百年だからこそ、「お大師さまが一緒に居てくださる」という弘法大師信仰の有り難さをしっかりと胸に刻みたい。