コロナ禍の高野山二大法会に想う

投稿日:2020年09月25日

高野山真言宗総本山金剛峯寺では、コロナ禍の中、今秋二大法会を厳修する。醍醐天皇から弘法大師号を賜ったことによる「大師号下賜一一〇〇年記念法会」と、天皇陛下のご即位を慶祝して鎮護国家・玉体安穏を祈願する厳儀「大元大法」である。いずれも平安仏教と呼ばれる本宗の信仰と伝統に根ざした法会だが、これまでに経験したことのない事態の中で迎える。
「大師号下賜一一〇〇年」では新型コロナウイルス感染拡大防止のため団参募集を行わず、全国末寺檀信徒にご宝号の写経を勧めて全国九ブロックの代表による写経奉納法会、もしくはご宝号念誦法会が営まれる。高野山に大勢が参集できない代わりに、高野山に大勢の祈りを集結する法会になる。
高野山では約八十年ぶりとなる「大元大法」も、国内外に蔓延しているコロナ禍の苦しみから衆生を救済するという具体的な祈りが加えられることになった。その著しい効験から、国家護持の秘法として、歴史の節目で修法され、また戦中は敵国調伏のために奉修されたこともある「大元大法」だが、令和の御代ではコロナ禍による世界中の苦しみを調伏することにもなった。
すなわち、両大法会に共通して必要なのは、高野山に国内外の人々の願いを少しでも多く振り向けてもらわなければならないということである。それは、仏教界がこの半年、実践してきた離れていても繋がることができる信仰の力の実践でありこの二大法会がその集大成になると言っても過言ではない。
世界中がコロナ禍という共通の苦しみの中にある今、ご宝号「南無大師遍照金剛」を共に唱え、「大元大法」の加持力がもたらす平安な世の到来を念じ、弘法大師を奉じる全ての人々の想いを高野山に集めようではないか。