新型コロナ感染不安の中でこそ安心を

投稿日:2020年03月15日

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、政府は大規模イベントの自粛や全国の公立学校の一斉休校の要請、中韓両国からの入国者を規制する等の対策を打ち出した。新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正案も成立した。こうした緊急対策に伴って国民の間では社会的不安が増大している。
「疫病」の恐怖は古今東西で変わることはなく、最大限の緊張感を持った感染防止対策の徹底が必要なことは言うまでもない。しかし、転売目的も含むマスクやトイレットペーパーの買い占めが続くなど、人心の荒廃も目立つ。 個人が感染防止対策を徹底することは絶対条件だが、不安を煽るデマに踊らされての狂奔は二次被害に繋がってしまう。「疫病」は「自分さえ助かればよい」という姿勢では撲滅することはできない。この新しい「疫病」を終息させるためには、社会的な感染予防対策の実施とこれ以上不安を増殖させないための宗教的な安心(あんじん)、すなわち不安の正体を見極める智慧が必要である。宗内の各本山を始め各寺院に於いて、拡大防止に向けて様々な対応が講じられている。終息のための祈願法要も連日営まれている。
そうした中、仁和寺では伝統的な儀式で用いる「覆面」を手作り紙マスクに転用。病気平癒の願いを込めた薬師如来尊の梵字を押印し、感染拡大防止を啓発する目的で参拝者に配布し始めた。行政の指導に従い、行動を起こすことは重要なことだが、それと共に仏教者としてどのような安心を社会に発信できるのか、そうした実践の一つとして注目すべき取り組みである。
社会が不安や恐怖の極にある時、仏教界はどのような安心を届けられるのか。現代人に救いを齎す世法と仏法の相依論は、新たな局面を迎えている。(令和2年3月15日号)