地球危機を救う知足安分の思想

投稿日:2016年08月20日

 「汝等比丘若し諸の苦悩を脱せんと欲せば当に知足を観ずべし。知足の法は即ち是れ富楽安隠の処、知足の人は地上に臥すと雖、猶安楽と為す。足るを知らざる者は天堂に処すと雖、亦意に称わず。足るを知らざる者は富むと雖も而も貧し、知足の人は貧と雖も而も富む」これは『遺教経』の教えであるが、今や人類がその存亡をかけて取組むべき喫緊の重要課題となった地球温暖化問題に、自ずから想起されるのがこの仏説である。
 仏教の「少欲知足」の思想は「知足安分」の言葉となって、曽ての日本人の生活の規範とされたが、戦後の権利主義や利益優先主義の風潮の中で消極的・退嬰的思想として忘却の彼方へと捨て去られた。然し今地球危機のなかで蘇生すべき思想である。今や地球は人類の際限もない欲望が創り出した温暖化によって存亡の危機に直面し、人心亦荒涼として凶悪犯罪続発して止まず、最後の癒しの場である筈の家庭さえも破壊したが、総ては知足安分を忘れた欲望充足への狂奔が創り出した凶悪世相である。
 知足とは勿論足るを知ること、即ち貪慾の虚しさを知ること。そして安分とは、すなわち分に安んずることである。だが、分に安んずるとは分相応に満足せよという消極姿勢を意味するのではなく、自らの環境・境遇のなかで、その環境・境遇を浄化すべく最善の努力を以て生きよということに他ならないのである。
 すなわち真言行者たる私たちは、自らに与えられた祈りの場に於いて真の祈りを捧げるとともに、自心の浄化とともに環境の美化に尽すべきであり、僧が先ず垂範すべきである。年頭、地球環境の美化とともに人心の浄化を祈る心切である。(平成20年1月1日号)